「台湾有事は日本有事」という言葉を、ニュースで見聞きする機会が増えている。
中国軍の演習、アメリカの警告、台湾海峡の緊張――。
だが、そもそもなぜ中国と台湾はここまで対立しているのか、きちんと説明できる人は多くない。
台湾問題は、単なる領土争いではない。
その正体は、中国という国の成り立ちそのものに関わる問題である。
中国と台湾という厄介な関係を理解し、変化する日々の情勢を読み解いてみよう。
台湾問題は「国と国の争い」ではない
まず大切な前提がある。
台湾問題は、中国を挟んだ「二つの国の対立」ではない。
この問題の出発点は、
中国国内で起きた内戦が終わりきらなかったことにある。
現在の中国(中華人民共和国)と台湾(中華民国)は、
どちらも「中国」を名乗る政権として誕生した。
つまり台湾問題は、
一つの国の中で起きた争いが、70年以上続いている状態なのだ。

なぜ中国と台湾は分断されたのか
中国内戦という原点
20世紀前半の中国では、
国民党と共産党が中国の主導権を争っていた。
日本の敗戦後、この対立は本格的な内戦となり、
1949年、共産党が勝利する。
共産党は北京で
「中華人民共和国の成立」を宣言。
一方、敗れた国民党政府は台湾へ撤退し、
台北を拠点に「中華民国政府」として生き残った。
こうして、
- 大陸:中国共産党の中国
- 台湾:国民党の中国
という、奇妙な分断が生まれた。
なぜ台湾は独立国にならなかったのか
当時、どちらの側も
「この分断が永久に続く」とは考えていなかった。
- 共産党は「いずれ台湾を取り戻す」
- 国民党は「いずれ大陸に戻る」
そのため台湾は正式な独立宣言をせず、
中国側も台湾を「中国の一部」と主張し続けた。
この暫定状態が、現在まで続いていることが、
台湾問題をより複雑にしている。
なぜ中国は台湾統一にこだわるのか
カギは「中国政権の正当性」にある
ここが、日本人にとって最もわかりにくい部分だ。
中国共産党は、
選挙で選ばれた政権ではない。
日本では、政権の正当性は選挙が支えている。
だが中国には、その仕組みがない。
では、中国共産党は
何を根拠に「中国を支配する資格がある」と主張しているのか。
中国共産党を支える三つの「正当性」
中国共産党は、建国以来、次の三つを柱にしてきた。
① 内戦に勝ち、中国を統一したという物語
共産党は、
「内戦に勝ち、混乱していた中国を統一した存在」
として自らを位置づけている。
だが台湾が共産党の支配下に入っていない以上、
この物語は完成しない。
台湾が残っているかぎり、
共産党は「中国を完全に統一した政権」にはなれない。
② 外国に奪われた主権を取り戻したという実績
中国共産党は、
「列強に踏みにじられた中国を救った政権」
という歴史観を重視している。
香港やマカオは返還された。
だが台湾だけが残ったままだ。
台湾を失った状態は、
「中国はまだ完全に主権を回復できていない」
という印象を国内に与え続ける。
③ 経済成長による成果
改革開放以降、
共産党は経済成長によって支持を得てきた。
しかし近年、
- 成長の鈍化
- 若者の失業
- 格差の拡大
によって、この柱は揺らいでいる。
だからこそ今、
「国家統一」というわかりやすい目標が、
より重要になっている。
台湾を失うと、中国は何を恐れるのか
もし台湾が正式に独立し、
それが世界に認められたら、
中国国内では次の疑問が生まれかねない。
- なぜ共産党は台湾を統一できなかったのか
- なぜ中国の領土を守れなかったのか
- 共産党でなくてもよかったのではないか
これは、中国共産党にとって
最も触れてほしくない問いである。
台湾は「共産党がなくても成り立つ中国」を示している
さらに中国にとって厄介なのが、台湾の存在そのものだ。
台湾は、
- 中国語を使い
- 中国文化を持ち
- それでいて民主主義を実現している
つまり台湾は、
「共産党がいなくても中国は成り立つ」
という現実例になっている。
これは、中国共産党の存在理由を、
静かに否定する存在でもある。
台湾はなぜ中国に戻りたくないのか
台湾社会では、民主化を経て
「自分たちは台湾人だ」という意識が強まった。
さらに香港で
「一国二制度」が事実上崩れたことで、
中国への不信感は決定的になった。
台湾の人々にとって、
中国に戻ることは
自由と民主主義を失うことを意味する。
中国による台湾侵攻は起こるのか
可能性はあるが、極めて危険な賭け
中国による台湾侵攻は、
決して簡単な選択ではない。
アメリカの介入、
国際社会からの制裁、
経済への深刻な打撃――
中国にとって失うものはあまりに大きい。
それでも、
- 指導部が成果を急ぐ
- 台湾が独立に踏み出す
- 米中関係で誤算が起きる
こうした条件が重なれば、
危険な決断が下される可能性は否定できない。
台湾問題の本質とは何か
台湾問題の本質は、
未完の内戦と、価値観の衝突にある。
- 統一を至上命題とする中国
- 自由と民主主義を守ろうとする台湾
この対立は、簡単に終わらない。
まとめ
台湾問題を理解するためのポイント
- 台湾問題は中国内戦の未決着である
- 台湾統一は中国政権の正当性に直結している
- 台湾侵攻は現実的リスクだが、中国にとっても大きな賭け
台湾問題は、
日本の安全保障とも深く結びついている。
だからこそ、感情ではなく、
背景を知ったうえで考えることが求められている。


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