こんな本まで読めるの?というラインナップに驚きました。
キンドルアンリミテッドのことです。
本好きなら利用しない手はありません。そのラインナップのなかから、とくに素晴らしい作品を独断と偏見でご紹介していきます。
とにかくいい作品ですから機会があればぜひ読んでみてください。好みがありますから損はしないと断言はできませんが、それでも一読してみる価値はある作品ばかりです。
さっそくご紹介していきましょう。
キンドルアンリミテッドとは
キンドルアンリミテッド kindle unlimited はAmazonが提供している電子書籍のサービスです。
月額980円でさまざまな作品が追加料金なしで読めるようになります。
気をつけるべき点としては、一度に10冊までしか利用できないことと、追加料金なしで読めるラインナップが変わることがある点です。
10冊以上読みたい場合はどうすればいいかといえば、どれか1冊を返却してあらたに読みたい作品を追加すればいいだけです。
また、ラインナップは変更することもありますから、今回ご紹介した作品も追加料金ナシから外れる可能性もあります。
あくまでも2021年1月14日時点での話としてご理解ください。
福田恆存「芥川龍之介と太宰治」
最初は目を疑いました。福田恆存が無料で読めるの?
もちろん、キンドルアンリミテッド kindle unlimitedに入会すればですが。
しかも福田の若き頃の代表作「芥川龍之介」と「太宰治」です。
芥川を論じるというより芥川によって自分自身を語っているかのような評論です。
福田が何かの会合の折、太宰治とすれ違いざまに「君の芥川論、読んだよ」と声をかけられたという思い出を全集の年譜に書いていました。福田にとっても思い出深い作品のひとつだったはずです。
さらに、太宰を励ますかのような評論「太宰治」も収められています。本作は太宰の生前中に発表されていますが、太宰本人が読んだかどうかは不明です。
しかし、この「太宰治」を読めば福田の太宰への愛情が読者に伝わってくるはずです。太宰を正確に評論しているとは思いませんが、太宰に対する温かいエールである本作は読んでいて気持ちのいいものです。
私事ですが、若いころ福田の「太宰治」を読んで感動し、すぐさま近くの書店に連絡して「福田恆存全集」全8巻を注文して取り寄せてもらったことを思い出しました。バイトで貯めたなけなしの金をはたいて購入した福田恆存全集をアパートに持ち帰り、くる日もくる日も読みふけった日々ももう遠い過去になりました。
ぜひ皆さんも福田恆存のすぐれた評論に一度目を通してほしいと思います。
山田風太郎「魔界転生」
映画化もされた「魔界転生」の原作を読んでみたいと思い検索したところ、キンドルアンリミテッドなら無料だということを知り驚きました。
しかも山田風太郎の作品はこの他にも数多くキンドルアンリミテッドで読書することができます。
つねづね読みたいと思っていた「戦中派不戦日記」もラインナップに入っていたのでさらに驚いた次第です。もちろんすぐに読み放題で目を通すことができました。いい時代になったものです。
さて、「魔界転生」ですが本作は上下巻に分かれており、もちろん2巻とも会員は追加料金なしで読めます。島原の乱後の日本を舞台に「魔」のものとして転生した天草四郎や荒木又右衛門らと闘うのが主人公の柳生十兵衛です。
映画では魔界衆の親分格であった天草四郎ですが、原作ではあくまで魔界衆の一員にすぎません。むしろ由比正雪や森宗意軒が真の黒幕という感じで、映画版は思い切ってキャラクターの整理をしていることがわかります。
私としては原作を読んで、いままで気にしたことがなかった島原の乱という歴史的大事件について興味をもつきっかけになりました。関連書籍に目を通すようになったのもこの作品のおかげです。
山本七平「日本はなぜ敗れるのか 敗因21ヵ条」
山本七平のベストセラーもキンドルアンリミテッドで読めます。
本書は小松真一の「虜人日記」をくわしく解説したもので、書名の「敗因21ヵ条」というのも「虜人日記」で小松真一が主張しているものです。
小松真一は太平洋戦争においてフィリピンで捕虜になり、その経験をもとに「虜人日記」を著しました。同書からの引用もかなり多く、むしろ「虜人日記」を読んだほうがいいのではという気にもなります。
もし本書にすぐれた価値があるとすれば、それは山本七平もまたフィリピンで終戦を迎え、小松と同じく収容所生活を経験したという点にあります。
山本にとって小松の感想は他人事ではなく真に迫るものだったのでしょう。山本自身、フィリピンでの経験について何冊か本にしています。
本書でも取り上げている「実数と員数」の問題などは山本の他の著作でも触れている重要なトピックです。
小松や山本に共通する日本軍に対する批判の核は、一言でいえば官僚組織に対する批判と言っていいでしょう。
日本軍の正体は典型的な官僚組織なのです。山本の言葉を借りれば、「学歴と社会的階層」だけでプライドを維持する人間がうごめく組織です。
そのような組織が戦争という非常時にまったく役に立たず、機能不全を起こした点を山本は厳しく批判するのです。所詮、役所仕事の戦争では勝てるわけがなかったのです。
山本は日本軍のなかに、やがて日本全体が感染していく病原菌を見ていたのでしょう。その意味で山本は慧眼でした。
今もなお、山本七平の批判が日本社会に対して、いや日本人に対して本質的なものでありつづけるのは、私たちが暮らす日本社会が、組織としての硬直化と個人個人の道徳的不感症を病根として内に抱えているからです。
病を治すにはまず病を知らねば話になりません。だからこそ、山本七平は今も読む価値があるのです。
幸田露伴「蒲生氏郷 武田信玄 今川義元」
幸田露伴の名著もキンドルアンリミテッドで読めます。
本書には「蒲生氏郷」「武田信玄」「今川義元」など、なぜか電子書籍では入手しづらい作品がおさめられています。
個人的には「蒲生氏郷」がオススメです。
蒲生氏郷は織田信長の娘婿であり、信長、そして豊臣秀吉と仕えて会津91万石を領する大大名に出世しましたが、病気で40歳という若さで亡くなっています。
この小説では、葛西大崎一揆をめぐる伊達政宗との駆け引きがドラマの中心になっており、そのため氏郷だけでなく政宗も重要な役割を演じ、むしろ読後の感想としては政宗のほうが印象が強いように感じます。
それでもさすがは露伴です。飽きさせずに最後まで読ませるだけでなく、氏郷や政宗の強烈なキャラクターを生き生きと躍動させるところなどは見事だと思います。
読み終わったあと誰かにうんちくを語りたくなる小説、それがこの作品のだいご味でしょう。
フィッツジェラルド「グレート・ギャッツビー」(光文社古典新訳文庫)
フィッツジェラルドの永遠の名作です。
古くは野崎孝、最近では村上春樹氏などすぐれた翻訳が多く存在しますが、この小川高義氏の仕事もすばらしいものです。
有名な冒頭を引用してみましょう。
まだ大人になりきれなかった私が父に言われて、ずっと心の中で思い返していることがある。
「人のことをあれこれ言いたくなったら、ちょっと考えてみるがいい。この世の中、みんながみんな恵まれているわけじゃなかろう」
他の翻訳者よりも原文にとらわれず自由に訳している印象です。
原文のおもむきとは少々違う感じがしますが、文意を追うなら小川氏の訳が一番いいのではないでしょうか。
ぜひ自身の目で確かめてみてください。
電子書籍を読むには
まずはキンドルアンリミテッドに登録
今回ご紹介した作品を読むには、まずキンドルアンリミテッドに登録しましょう。
月額980円、初回30日間は無料で利用できます。
とりあえず登録してみて、ダメなら解約する選択肢もあります。
Kindleを購入しよう
電子書籍を読むのはスマホでも可能です。アプリをダウンロードすればスマホでも読めます。
私自身もスマホにアプリをいれていますが、正直、それほど使いません。理由は目が疲れるからです。スマホは長時間の読書に向きません。
やはりkindleで読むほうが負担が軽くて済みます。kindleにも種類がありますが、漫画を読むのでなければ以下の商品で十分です。
Kindle フロントライト搭載 Wi-Fi 8GB ブラック 広告つき 電子書籍リーダー
私が使用しているのもこのタイプですが、読書するならこれで十分です。
もし余裕があれば、USB充電器と純正ブックカバーを一緒に購入するのをオススメします。kindle本体にはUSBケーブルは付いていますが、充電するときにいつもパソコンからでは面倒です。最初はUSB充電器はいらないだろうと考えていましたが、それでは外出先で充電できません。旅行や出張の際に不便です。
さらにブックカバーもあったほうがいいです。そんなものはいらないだろうと高をくくった結果、あとから買うはめになりました。最初に揃えたほうがいいでしょう。
コメント