自分の好きなことだけやってみる パーリ語を学んでみた

書評

人生は何かをするにはあまりに短く、何かをしないではあまりに長いものです。

貴重な人生を充実したものにするには、自分が本当にしたいこと、これをやらないでは生きている甲斐がない、と思わせるものに熱中すること、これが大切でしょう。

好きなことをやらないで何の人生か、ということです。

前置きはこのぐらいにして、今回ご紹介するのはパーリ語についてです。

もちろん、知らない方がほとんどでしょう。どんな言語なのか、これから紹介しますが、興味が持てない方がほとんどではないかと少し不安です。

では、パーリ語とは何か、見ていきましょう。

パーリ語とは

パーリ語は南方仏教の経典に使用されている言語です。母国語として使用する人はいません。あくまで文献上で確認できる言語です。

最古の仏教経典はパーリ語で記されており、原始仏教を研究するためには絶対に必要な言語でもあります。

サンスクリット語とも近い関係にあり、サンスクリット語が人工的に完成された書き言葉であるのに対し、パーリ語は俗語であるとされています。

スリランカやミャンマー、タイなどで信仰されている上座部仏教の経典を読むためには必須ですが、現在ではそれらの仏典もすべて日本語訳されており、わざわざパーリ語を学ぶメリットに乏しいように考えられています。

一応、話の流れとしてパーリ語を学ぶメリット・デメリットについて見ていきましょう。

パーリ語を学ぶメリット・デメリット

メリット

メリットは特にありません(笑)強いていえば、原始仏教のテキストを読めるようになるぐらいです。読めたからどうだといわれれば返す言葉はありません。

未知の言語を学ぶことを楽しめる人々のみが通れる狭き門、それがパーリ語の世界です。メリットうんぬんでパーリ語に近づこうとするのはむしろ冒涜です(笑)

金や名声に心動かされない高貴な精神の持ち主のみが呼吸できる聖なる領域です。まあこれは冗談ですが、パーリ語を学んで何か利益をえようと考えるならやめた方が無難です。もっと有益なものが人生には山ほどありますから。

デメリット

パーリ語を習得するには時間がかかります。人生は短いのです。時間が惜しい、と感じたならパーリ語はあきらめましょう。無理して学ぶ必要はありません。実用的な資格の勉強でもはじめてください。

パーリ語を学ぶために必要なテキスト

外国語を学ぶときに必要になるのは文法書、辞典、原書です。それぞれ見ていきましょう。

文法書

水野弘元「パーリ語文法」

スタンダードな文法書です。パーリ語とは何かから始まり、音韻、語形、造語、文章など一通りパーリ語について学べます。

巻末には索引もついています。

参考文献も豊富で、W・Geigerという人のパーリ語文法書がもっともすぐれているというのもこの本で知りました。

そのほか、Rhys Davids の名著「Buddhist India」を知ったのもこの「パーリ語文法」のおかげです。

とりあえず初心者は買っておいて損はナシというところでしょうか。

木岡治美「読めばわかるパーリ語文法」

現時点では、もっともすぐれたパーリ語文法書といえるのではないでしょうか。

水野弘元の「パーリ語文法」よりも文法書としてはこちらの方が使いやすい。

動詞の活用、名詞・形容詞の曲用、さらに連声についても詳しく載っています。

さらに、この本を読んで初めて知ったのが「六合釈」です。「リクガッシャク」と発音するそうです。

要は合成語のことですが、それを6種類に分類して詳しく説明しています。

惜しむらくは練習問題がないことですが、日本語によるパーリ語の文法書があるだけでも満足すべきなのかもしれません。

辞典

水野弘元「パーリ語辞典」

日本語によるパーリ語の辞典です。これほどマイナーな言語でありながら非常に廉価(比較的)で入手できます。

専門の研究者でなければこれで十分でしょう。著者も「はしがき」に書いています。

学生向きの辞書であるため、できるだけ廉価にすることを旨とした。高価では簡単に入手することができないからである。

かつて河野与一は、外国語を学ぶのに必要なものは「金と暇」だと喝破しました。

たしかにその通りで、「金と暇」がない人は外国語習得は難しいと言わざるをえません。

この「パーリ語辞典」は「金」の分野では大いに学習者の助けになるはずです。「暇」は意識的に作っていくしかありません。

原書

原文が手元にあるのとないのとでは、学習意欲に関わる重大な問題です。そこで、あまり長くなく、さらに理解しやすい原書を買い求めるのが理想的です。

私がおすすめするのは「The Dhammapada」です。原文と英文が併記されているバージョンが望ましいでしょう。

ただ、私が愛読した「The Dhammapada: With Introductory Essays, Pali Text, English Translation and Notes (Oxford India Paperbacks)」は現在では中古でしか入手できないようです。

Amazonで検索するといくつかヒットしますので、ぜひ自分にあった作品を探してみてください。

結論→のんびりやろう

一応、結論としてはのんびりやろうということです。

言語を習得するにはスピードが大切なのはよくわかります。だらだら学習していても身に付かないものですからね。

ですが、誰に強制されるでもなし、習得といってもどこまでいけば習得なのかは誰にもわかりません。やっぱりのんびり行こうという結論に落ち着きそうです。

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