もしあなたが中学生レベルの英語力をお持ちなら、英語を通して他の外国語にチャレンジしてみてはどうですか?
今回オススメするのは、Teach Yourself シリーズです。
外国語を学ぶ方にはお馴染みのモノかもしれません。
手軽でわかりやすく、説明文も簡単な英語ですので理解も容易です。
ですが、よくあるほんのおさわり程度の語学書ではありません。
真剣に取り組めば、かなりの語学力を身に付けることができます。
今回は、まったく私の好みと独断で、おすすめのTeach Yourselfの本をピックアップしてご紹介していきます。
そのため、ご紹介する外国語はマイナーなものに偏りがちな点はどうぞご容赦ください。
Complete Arabic
アラビア語は国連の公用語のひとつです。
この本が対象としているのは「Modern Standard Arabic」で、書き言葉です。
西はモロッコから東はイラクまで、小説や新聞などで使用されている言語です。
書き言葉とはいっても、会話で使えないかというとそんなことはありません。
「Modern Standard Arabic」は、イスラム圏に生きる人々も学ぶ言語ですから、この言語が理解できるようになれば、お互いの意思疎通が容易になります。
英語を使えばすむじゃないか、という意見もあるでしょうが、英語で会話するのとアラビア語で会話するのとでは、親密度がまるで違います。
アラビア語で会話できるメリットは計り知れません。
とはいっても、この本だけでペラペラになれるかといえば、もちろんそんなことはありません。
アラビア語はそんな甘いものではありません。
ですが、この本である程度の体力を養っておくことはできます。
山登りのための基礎訓練といったところでしょうか。
アラビア語といえばアラビア文字ですが、この本もアラビア文字の説明からスタートします。
アラビア文字は右から左に書いていく文字ですので、アルファベットとは反対です。
このアラビア文字の習得が最初の難関です。
ですが、大丈夫です。
1か月もやっていればだんだん慣れてきます。
正直、この本は文字に関しては親切とはいえませんので、補助教材として、以下の本を推薦します。
まずは文字に慣れましょう。
慣れてしまえば、あの流れるようなただの線にしか見えないものが文字として認識できるようになってきます。
このときが外国語を学ぶ一番楽しい時期でしょうね。
Teach Yourself シリーズのいいところは、練習問題が豊富なところです。
答えも巻末にまとめられていますから、安心です。
ただ、新しいバージョンは、答えはネットのHPにまとめられている場合がありますから、この点は注意してください。
ある程度アラビア語に慣れてきたら、やはり最終目標は「クルアーン」を原文で読むことでしょうか。
この本だけでは難しいのですが、目標は高く持っていた方がやりがいも生まれるというものです。
ぜひ、この本からスタートしてみてください。
Complete Sanskrit
サンスクリット語は古代インドの書き言葉です。
パーニニという学者(学派)が完成させたと伝えられています。
古代インドのヴェーダ文献などはこのサンスクリットで書かれています。
仏教の経典でも、「維摩経」や「妙法蓮華経」などは サンスクリット本がありますよね。
我が国にとっても無縁ではない言語といえるでしょう。
このサンスクリットも独自の文字を持っていて、デーヴァナーガリといいます。
現代のヒンディー語でもこの系統の文字を使用していますから、このデーヴァナーガリを習得すれば、ヒンディー語にも接続が容易です。
このサンスクリットという言語も難物です。
かつて中国文学者の高橋和巳は、サンスクリットを学ぼうと思い立ち教授に相談したところ、金がないやつは無理だと言われ断念したという話をエッセーのどこかで書いていましたが、当時であればさもありなんという話です。
当時は、文法書にしても辞書にしても原文にしても入手するのが難しかったでしょうから。
ですが、いまはネットの普及で状況は一変しました。
英語というツールを使えば、非常に廉価でサンスクリット関連の本を集めることができるからです。
本当にいい時代になりましたね。
ちなみにサンスクリットはインド・ヨーロッパ語族に属する言語ですから、ドイツ語やフランス語の知識があればさらにアクセスしやすいと思います。
ただ、一つのヤマは sandhi (連声)です。
ここで挫折しないように気をしっかり持たなければなりません。
あまり脅かすつもりはありませんが、この点を楽しめるなら、あなたは間違いなくサンスクリットに向いています。
大体の人は、ここでぷいと振り返って、それほど連声が複雑でないパーリ語のほうに浮気してしまいます。
いずれにしても、気楽な気持ちでトライしてほしいと思います。
この本が書棚にあるだけで、いい装飾にもなります。
ぜひお買い求めください。
Complete Ancient Greek
言語好きなら避けては通れないのが、Ancient Greek です。
「It’s Greek to me!」という慣用句を引用するまでがワンセットです。
なんといっても、ラテン語と並ぶ西洋文明の源流です。
Ancient Greek を理解できるのはステータスです。
どれほど多くの先人がこの分野に突撃して、玉と散ったことか。
死ぬまでに読めるようになりたいと念じつつ、本当に死んでしまう人のいかに多いことか。
ぜひ、Teach Yourself で今一度チャレンジしてみましょう。
この新しい版は手触りもよく、洋書にしては表紙もオシャレで申し分ありません。
前の版と中身はそれほど違わないように感じますが、練習問題の解答が削除され、ネットのHPを参照しなければならないのが唯一残念な点です。
この構成としては、まず前提であるギリシャ文字からスタートです。
これは、そんなに難しくありません。
少なくとも、アラビア文字やサンスクリットと比べると余裕です。
ギリシャ文字は数式でも使われますから、まったくの未見ということはないでしょう。
また、極論ですが、大文字はそれほど本気になって覚えなくてもいいです。
まずは小文字だけマスターしましょう。
もちろん覚えられるなら覚えるに越したことはありません。
文字のつぎにはすぐ定冠詞と名詞の変化です。
この辺も余裕ですね。
口笛を吹きながらささっと終わらせましょう。
次は形容詞の変化、次は動詞の変化、なんだ、簡単じゃん。
こういう調子で全ページをやれればいいのですが、Ancient Greek はどんどん難しくなってきます。
正確にいうと難しいというよりは面倒くさくなる。
この本は非常によくできていますので、Ancient Greek も楽しく勉強することができるように配慮されています。
ですから面倒くさい原因は Ancient Greek にこそあるのです。
その理由は、皆さんが経験して体で知ってほしい。
面倒くささがよーくわかった、と感じたなら、またこのページにきて思いのたけをコメント欄にぶちまけていってください。
皆さんの心の声をお待ちしています。
Complete New Testament Greek
上記の 「Complete Ancient Greek」が紀元前4~5世紀のアッティカ方言を主にしたものであれば、この「Complete New Testament Greek」はコイネーを対象とします。
コイネーというのは、アレクサンドロス大王のオリエント遠征の結果、ギリシャ世界が拡大し、オリエントの広い地域で話されたギリシャ語のことです。
アッティカ方言と比べるとやや簡略化されたギリシャ語という印象で、具体的には名詞や動詞変化にある双数(両数)がありません。
ですから、Ancient Greek を学ぶなら、このコイネーから学ぶのもアリです。
比較的学びやすいですからね。
そのため、上記の「Complete Ancient Greek」に比べるとページ数も少ないわりに、練習問題の解答も巻末に掲載されていたりと、この本だけで完結して学ぶことができるのは非常に好印象です。
また、コイネーの代表的な古典は新約聖書です。
西洋の読者がこの「Complete New Testament Greek」を手に取る理由は、新約聖書を原文で読む力を身につけたいからで、引用の例文も新約聖書がほとんどです。
もちろん、ギリシャ文字の説明から入りますから、まったくの初心者でもわかるように編集されてます。
やっぱり Teach Yourself いいですよ。
ちゃんと仕事してます。
この「Complete New Testament Greek」の目的は、読者が新約聖書を読めるようにすることですから、ぜひ原文の新約聖書も手元に置いておけば気分が盛り上がっていいですね。
Complete Babylonian
こちらはバビロニア語です。
バビロニア語って何?という感じだと思います。
この本が対象としてるのは、紀元前2,000年から紀元前後まで古代オリエントで使用された言語です。
「目には目を、歯には歯を」のハンムラビ法典の言語といえばわかりやすいでしょうか。
使用地域としては、現代のイラク中部から南部にかけてとみられます。
もちろん死語ですからネイティブスピーカーは存在しません。
そんな言語を学んでどうするの?なんて野暮なことは言うなかれ。
そんな言語だからこそ、学びたいのが人情です。
このバビロニア語はいわゆる楔形文字でつづられた言語ですが、このTeach Yourself シリーズではすべてアルファベット表記になっています。
つまり、楔形文字に習熟せずともバビロニア語を学べるように工夫されているのです。
ありがたいですね。
楔形文字についても一応の説明はありますが、楔形文字を習得したいかたはこの本以外を参照したほうがいいです。
これだけでは楔形文字の習得はむずかしいでしょう。
楔形文字を学ぶならこちらです↓
Teach Yourself シリーズの特徴である練習問題も豊富ですし、もちろん答えもあります(少なくとも前の版までは巻末にありました。新しい版は巻末に載っていないかもしれませんが、安心してください。HPで見ることができます)。
この本をみっちりやれば、バビロニア語についてある程度の知識を得られるでしょう。
日本でバビロニア語について知っている人間がどのくらいいるのか知りませんが、確実に少数派です。
知的好奇心と知的虚栄心を刺激された方は、ぜひチャレンジしてみてください。

まとめ
今回ご紹介したほかにも、Teach Yourself シリーズはさまざまなラインナップがあります。
興味があるかたは、ぜひ検索してみてください。
思わぬ掘り出し物があるかもしれませんよ。
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