幸せになるために
タイトルは幸せになる「技術」です。
「技術」ですから、「才能」と違って学ぶことができます。
伝達可能な知識というわけです。
しかし、幸せの定義なんて人それぞれ、万人が幸せになる方法なんてあるんでしょうか?
幸福論といっても、それはつまり、幸福な人の自分語りにすぎないのではないでしょうか。
その人はその人のやり方で幸せになれたかもしれませんが、そのやり方は他人には適用できないのではないか。
なぜなら、ひとりひとり、みんな違う人間だからです。
こういった見解は、常識的なものでしょう。
わたしも敢えて異論を唱えようとは思いません。
しかし、です。
上記の主張にこだわるのは、得策ではありません。
なぜなら、わたしもあなたも、ともに幸福にならなければならないからです。
その方法を一緒に探していきましょう。
そのためには、先人の知恵に耳を傾け、真理の声を聴きとろうとする姿勢が大切です。
誰から始めたらいいでしょう。
まずはこの人に登場してもらいましょう。
古代ギリシャの哲学者、エピクロスです。
エピクロス登場
エピクロスはBC341年に生まれています。
ですから、エピクロスが活躍した時代というのは、アレクサンドロス大王によってギリシャ世界が遠くインドまで拡大したヘレニズム時代にあたります。
いわば、国際化の時代といえるでしょう。
ギリシャの様式がアジアにまで広がった反面、当のギリシャが没落しつつあるという世界、それがヘレニズムといえましょう。
心の秘密
エピクロスの主張のひとつ、「自己充足」というキーワードに注目してみましょう。
エピクロスのいう「自己充足」とはどんなことを指すのでしょうか。
それは、欲望のコントロールに関する知恵です。
欲望といってもさまざまな欲望がありますが、これらもろもろの欲望についてまず知ることが重要であるとエピクロスは考えます。
食欲のように生きるために必要不可欠な欲望もあれば、名声欲のように必ずしも生存に必須でない欲望もあります。
どちらも人間にとって自然な欲望ですが、これらのコントロールによって、私たちは心の平安(アタラクシアー)を得ることができるといいます。
では、どのようにコントロールするかというと、欲望の飽和をさけること、これが肝要だというのです。
欲望が飢えを感じる、そしてそのときに少しだけ欲望を満足させてやる。
そうすることで、欲望は少しのもので満足するようになる。
コントロールというより、むしろ動物の「しつけ」のような感覚でしょう。
私たちは自分自身のなかに、手なずけるべき動物をかかえているのです。
動物より猛獣といったほうがいいかもしれません。
油断するとケガをするのは、われわれのほうだからです。
エピクロスはこの猛獣を「欲望」と表現しましたが、現在のわれわれにとっては「欲望」では少しインパクトが弱いように思います。
いっそ「狂気」とか「逸脱しようとする欲動」とか、どきりとするような言葉がふさわしいかもしれません。
まとめ
ここで最初の言葉を思い出していただきたい。
わたしもあなたも幸福にならなければなりません。
つまり、わたしもあなたも自己の猛獣を飼いならす必要があるということなのです。
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