マニアにおすすめ。文庫クセジュ7選

書評

知る人ぞ知る文庫クセジュ。

フランスの新書の翻訳版ですが、相当の本好きでなければ、その存在すら知らないでしょう。

日本の新書サイズで黄色いカバー。哲学から歴史、取り扱う内容も硬派なら、その文体も人を容易に寄せ付けない硬派なものです。

とにかく個性的な文庫クセジュのなかから、今回は、とくに7冊を厳選してご紹介します。

文庫クセジュとは

文庫クセジュは白水社で刊行されている新書のシリーズです。

フランスの叢書の翻訳ですが、印象としては、とにかく取っつきにくい。翻訳もこなれていない感じですし、内容も網羅的で初心者にはわかりにくい部分があります。

しかし、です。

そんなクセジュでも、なかには優れた作品が含まれているのも事実です。そんなクセジュのラインナップの中から、とくにおすすめの作品をピックアップして以下に紹介します。

おすすめ7選

仏教 アンリ・アルヴォン

仏教の入門書として一番オススメなのが本書です。

アーリア人のインド侵入から筆を起こし、彼ら侵入者の宗教であるバラモン教の圧倒的な影響下に成立した仏教について、その歴史と教義を深すぎず広すぎず、絶妙のバランスでまとめた一冊です。

仏教はさまざまな要素が混入しており、全体的な理解が難しいものです。実際、私自身いろいろと仏教入門書を読み漁りましたが、一向に要領を得ずに途方にくれていたときに本書に出会いました。

この本を読んだあと、仏教の核をがっちりつかまえた、という実感をもったなつかしい本なのです。しかも、この著者は仏教の専門家ではなく、本業はドイツ語の教師のようですが、ここまで仏教をコンパクトにまとめられる力量に感心しました。

とにかくオススメ。

仏教 (文庫クセジュ)

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チベット 危機に瀕する民族と争点  クロード・B・ルヴァンソン

チベット問題について知りたいなら一読しておく価値があります。

そもそも日本でチベット問題は、左右のイデオロギーによって取り上げられ方が大きく異なる難しい問題です。

保守派は積極的に言及するものの、詳細についてよく知らないようですし、一方のリベラル派や親中派はこの問題を黙殺して恬として恥じません。

そういった中で、チベット問題についての基本的な知識を得ておくのにちょうど良いのが本書です。

チベットの歴史や中国の侵攻、そして現在の状況まできめ細かく説明しており、あくまで客観的事実に焦点を合わせて記述している姿勢に好感が持てます。一読しておく価値はあると思いますよ。

チベット?危機に瀕する民族の歴史と争点 (文庫クセジュ)

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ギリシア文法 シャルル・ギロー

古典ギリシャ語ファンなら知らぬものはいない名著。

ということは、日本のほとんどの人は知らない名著でもあります。

これからも読まれない名著であり続けることでしょうが、あえて紹介してみました。

レベルとしては中級者以上という印象ですから、余計読まれないでしょうね。どうぞ興味をもった物好きな方は手にとってみてください。

ギリシア文法 (文庫クセジュ)

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ソフィスト列伝 ジルベール・ロメイエ=デルベ

ソフィストといえば、プラトンだけを読んでるとイエスに対するパリサイ派みたいなイメージで、まず評判が悪いですよね。

本書はその汚名を返上し、名誉を挽回するためのささやかな試みといえます。

取り上げられているのは、プロタゴラス、ゴルギアス、リュコフコン、プロディコス、トラシュマコス、ヒッピアス、アンティフォン、クリティアスの8人で、それぞれの生涯と学説が紹介されています。

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ヘーゲル哲学 ルネ・セロー

ヘーゲルといえば難解、というイメージですよね。しかも、原文のドイツ語も決して名文とはいいがたいというから困ったものです。

ところが、本書はすらすら読み進められるんです。

ヘーゲル哲学なのに、えっ、こんなに簡単にわかっていいの?てな感じでページを繰ることができます。

途中でちょっと不安になってきます。ひょっとして自分はいい加減に読んでるんじゃないか、という不安ですね。

ぜひ本書を読んだ後に、ヘーゲルの「精神現象学」にでもチャレンジしてもらいたいものです。

ヘーゲル哲学 (文庫クセジュ 542)

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中国の外交 フランソワ・ジョワイヨ

中国共産党が国共内戦を制し、中国大陸の覇者となってから(1949年)、1992年までの外交を丹念に読み解き、中国が欲しているものを探ろうという試みが本書です。

1992年までですから、まだ圧倒的な経済成長が始まる前の中国が考察範囲です。

現在、アフリカ大陸で強烈な存在感をもつ中国ですが、アフリカ大陸への接近は長い歴史があることが本書を読めばよくわかります。

現在の中国を知るためにも、目を通しておいて損はありません。

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ストア派 ジャン=バティスト・グリナ

ヘレニズム時代に始まったストア派の運動は、1世紀から2世紀にかけてエピクテトスとマルクス・アウレリウスの登場で絶頂を迎えたといっていいのではないでしょうか。

そのストア派の学説をゼノンから丹念に紹介したのが本書の特徴です。

著者も最後の方で書いていますが、ストア派の哲学は決して古臭い死に絶えた遺物ではありません。

現在でもなお、生命力を失わない哲学なのです。

おそらくこれからも、ストア派はその命脈を保っていくのではないでしょうか。仏教との親和性もありますしね。ぜひストア派の全体像をこの本で確認してみてください。

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まとめ

文庫クセジュは、翻訳のせいなのかどうかはわかりませんが、読者を選ぶ新書という感じがします。

じつは名著も少なくないので、もっとポピュラーになってほしいとつねづね考えていますが、どうでしょうか。

今回ご紹介した作品は比較的読みやすいものですので、ぜひ一度、手に取って確認してほしいと思います。

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