経済を理解するための本 おすすめ5選

書評

経済についての知識は大きな強みになります。

私たち自身の生活をより良くしていくためにも、あるいは政府の経済政策をより客観的に評価するためにも、日々の経済ニュースに右往左往しないためにも経済学の知識は役に立ちます。まさに実学です。

経済を理解するために必要なスキルは高校生レベルの読解力です。学ばない選択肢はないでしょう。

今回はそのためにオススメの5冊をご紹介します。経済学の素人にこそおすすめしたい5冊です。

まずは経済学を学ぶメリットについて以下にまとめます。

経済学を学ぼう

経済学を学ぶことのメリットとして、次のような点があげられます。

経済ニュースがより深くわかるようになる
政府の経済政策を客観的に評価できる

経済ニュースは、知識がないとわかりにくい場合があります。

たとえば、「貿易黒字」という言葉があります。

私たちはこの言葉を自分自身の生活経験の範囲内で理解しようとします。こんな感じです。

貿易黒字が増える→儲けている、貿易赤字がふくらむ→日本の競争力が落ちている(損している)などなど。

経済学を学べば、こういった理解が完全に誤解であることがわかりますが、知識がないと正しい評価ができません。

また、政府の経済政策についても同様です。

私たちの生活にもストレートに影響する経済政策はどのようにあるべきか、これは難しい問題です。

たとえば、アベノミクスをどう評価するか、これは経済学者でも意見が分かれるところですが、事実として指摘しておきたいのは、アベノミクス以前以後では企業の求人数が劇的に増え、売り手市場に変化したことです。

これをアベノミクスの成果とするかどうかも評価の分かれるところでしょうが、経済学の知識がないと、この議論そのものの理解すらおぼつかなくなります。

知らないことを知るのは大きな前進です。知ることで、騙されることを回避する可能性が生まれます。

経済について知識を深めることは、結局は私たちの生活そのものの向上にも結び付くのです。

本を選ぶときのポイント

経済についての本はまさに汗牛充棟です。

どれから手をつけていいか迷うのではないでしょうか。

ここでは、本を選ぶときのポイントをいくつか見ていきましょう。

わかりやすさで選ぶ

まずは、わかりやすさです。イラストを多用しているなど、わかりやすいと感じる本を選ぶべきです。

経済学というのは、複雑な事象を単純化して、経済の本質を明らかにしようという学問です。

当然、理解するのが難しい議論も多々あります。初心者はそこまで深い議論にとらわれることなく、大体の理解をまずは目標とすべきです。

細部は専門家の領域です。経済学のコアの部分をつかむこと、ここが大切です。

そのためには、とにかく自分にとってわかりやすい本を選ぶのがいいでしょう。

極端な議論の本は避ける

かつて、経済評論家の上念司氏が面白いことを言っていました。

経済学の本には「ハルマゲドン本」がある、というのです。

一定の年代の方には「ハルマゲドン」という言葉はなつかしく響くでしょう。

そうです。例のやつです。人類滅亡が大好きな人々が好んで使う言葉です。

じつは経済学にも、この系統の本が存在します。いわく、日本は破綻する、いわく、このままだとハイパーインフレになる。こんな感じです。

この手のおどろおどろしいタイトルの本は避けましょう。それだけのことですが、意外にこの手の本は多い。

こういう本から経済学を学ぶのは混乱する原因になるだけです。滅亡ネタには注意ということです。

御用学者の本は避ける

御用学者なんているの?と思っていた私がバカでした。御用学者は確実に存在します。

では御用学者とは何か?権力者のご機嫌をうかがって、言説を左右するひとのことです。

東日本大震災後に、復興特別税という増税が課されることになりましたが、そもそも、未曽有の大災害で景気が冷え込んだときに、さらに景気を冷え込ませる増税を決行するなんてちょっとどうかしていると思いますが、この増税を支持した経済学者たちが山ほどいるのです。

興味のある方はWikipediaで「復興特別税」を調べてみてください。

あの大災害のときに、火事場泥棒的に増税を決めた政府も政府なら、賛同した学者も学者でしょう。こういった人たちの本をすすめることはありません。

おすすめ5選

N・グレゴリー・マンキュー「マンキュー入門経済学」

入門書ですが、よくある浅い本ではありません。これ一冊で経済学の基本は大丈夫、と言いたくなる名著です。

レベルが高いのにしかも読みやすくわかりやすい。ここから経済学に入っていけば、間違いが少なくてすむのではないでしょうか。

第一部のイントロダクションで「経済学の十大原理」を学びます。

この原理も覚えておきたいところです。もちろん、読んだあとしばらくすれば忘れると思いますが、折に触れてこの十大原理に戻ってくることで、経済学の理解もより深まっていきます。

たとえば、第1原理のトレードオフや、第2原理の機会費用など、基本的ですが極めて重要な概念です。

しかもこれらは「原理」と銘打ってありますから、誤りであると証明しないかぎり覆らない掟のようなものです。

とくに興味ぶかいのは第9原理の「政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する」というものですが、デフレ気味の現在の日本で考えてみましょう。

第9原理によれば、インフレの反対であるデフレの原因も何となくわかりそうなものです。

紙幣を印刷する→物価が上がる、ならば、紙幣を印刷しない→物価が下がる、ということでしょうか。

その真相は本書を読んで確認してもらうとして、本書は、マクロ経済・ミクロ経済の全体像について理解するにはうってつけの名著です。まずこちらから経済学を学び始めるのがいいでしょう。

石川秀樹「速習!マクロ経済」

マクロ経済の解説書です。

ただ、この本は資格試験用の参考書として書かれたという特徴があります。

公務員試験や不動産鑑定士、中小企業診断士などの資格です。そのため、試験問題に答えるためのマクロ経済学の勉強という内容になっています。

しかし、マクロ経済学について手っ取り早く理解するには、この本を勉強するのが一番です。

なにせ、資格試験用の参考書ですから読者に理解してもらわなければ話になりません。そのための工夫がちりばめられています。

「経済学の思考パターン」から「グラフの読み方」、マクロ経済学についても「国民経済計算」、「財市場」「資産市場」、「IS-LM分析」から「IS-LM-BP分析」まで、必要なトピックはあらかた収められています。

使える本、という観点からは一番使えるのが本書です。

練習問題もありますし(もちろん解答もあり)、マクロ経済学についてすばやく理解したい方にはうってつけの作品といっていいでしょう。

ちなみに同著者による「速習!ミクロ経済」もありますから、2冊とも本棚におさめておくのが理想的です。

野口旭「ゼロからわかる経済の基本」

講談社現代新書から、寝転がって読める経済書の紹介です。

新書ですから、軽いし持ちやすい。ですが、「ゼロからわかる」とうたっているように、内容はしっかりしています。

第一章は、「経済を知ることがなぜ必要か ー「失われた10年」を振り返ってー」となっており、本書における野口氏の問題意識が表現されているとおもいます。

もはや「失われた10年」どころか「20年」いや「30年」という声も聞こえるようになっており、経済について正しい知見をもたなければ、私たちの未来は暗いものとならざるを得ません。

本書は、市井に生きる私たちが持つべき基本的な経済の知識をコンパクトにまとめたものなのです。

非常にわかりやすく便利な本です。ぜひ一度目を通してみてはいかがでしょう。

菅原晃「高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学」

高校生レベルの読解力があれば理解できるのが本書です。

著者の菅原氏は公立高校の教諭で、やはり先生なだけあって説明が簡明です。

貿易黒字とは何か、どんな意味があるのか、この疑問も、本書を読めば解決します。

結論からいえば貿易黒字にとくに意味はありませんが、なぜ意味がないのか、その点は本書で確認してみてください。

本書は、「GDPの三面等価」から「貿易黒字」、「リカードの比較優位論」さらに「国債について」や「財政政策と金融政策」など、現代の経済状況を認識するうえで欠かせないトピックがそろっています。

そして非常にわかりやすい。この本を読めば、経済ニュースにある貿易黒字の減少を嘆く記事が、まったくの見当はずれであることがよくわかります。

逆に言えば、この認識に欠けている人が経済ニュースを書いている現状におどろくはずです。

日々消費されるニュースは注意して読まなければならないことを教えてくれます。

本書を読んで、まず経済の基礎を固めて日々のニュースに接してみるのもおもしろいかもしれません。

ジョン・メイナード・ケインズ「雇用、利子、お金の一般理論」山形浩生 訳

経済学に革命をもたらした歴史的名著の翻訳です。

しかも文庫本。572ページですからちょっと厚めですが。ケインズのこの名著は何種類か翻訳がでていますが、本書がもっとも読みやすいのではないかと思います。

ただ、内容は少々難しい。初心者にとってはチンプンカンプンでしょう。

注意深い読者なら、最後まで読み通せるかもしれません。暇があるときに腰を落ち着けて読んでみる、そういう時間をもつこともときには大切です。

なんといっても本書は、訳者の山形浩生氏も書いていますが、「経済学史上、最も重要で影響力の大きい本」なのです。

経済学の「古典」ですが、いまなお各国政府は、ケインズ式の経済対策をおこなっています。

いまなお現役で影響力をもつ本などそうそうあるものではありません。

一度は読んでみたい本でもあります。また、読んで理解したなら他人に自慢できそうな本でもあります。

まとめ

今回ご紹介したのは初心者でもとりくめる5冊です。

興味を持った方は、さらに深く広く読書にとりくむことをおすすめします。

上記5冊で引用している本や参考文献に挙げている本は、まず間違いない名著ですから、ぜひそちらを参考に経済の知識をより一層深めてください。

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