英語を駆使することで、外国語習得がより一層カンタンになります。
とくに古典ギリシャ語のような日本でマイナーな言語に関してはそう言えます。
なぜなら、日本語より英語の方がテキストが豊富に存在するからです。古典ギリシャ語は西洋文明の濫觴です。
当然、古典ギリシャ語の研究の厚みも日本とは比べものになりません。英語が強力なツール足りうる所以です。
今回は、Cambridge University Press の Reading Greek シリーズをご紹介します。
なぜ古典ギリシャ語を英語で学ぶのか
繰り返しになりますが、英語の方が古典ギリシャ語の本が豊富だからです。
古典ギリシャ語は西洋文明の大きな柱のひとつです。その研究の重層性も日本とは比較にならないほど厚いものです。
例えるなら、先秦時代の中国古典と日本との関係のようなものでしょうか。非常に重要な関係です。
そのため、古典ギリシャ語関連の書籍も日本とは比べものにならないほど豊富です。
といってしり込みするには及びません。それほど高度な英語力が必要なわけではないからです。
気軽な気持ちで、英語というツールで古典ギリシャ語に挑んでいただきたいと思います。
Reading Greek シリーズ
もっとも有名な古典ギリシャ語のテキストがこのシリーズでしょう。
内容から判断すると、おそらくイギリスをはじめ、欧米の高校生以上の学習テキストとして使用されているのではないでしょうか。
入手すべきテキストは以下の3つです。
「Text and Vocabulary」、
「An Independent Study Guide」、
そして「Grammar and Exercises」です。
それぞれ見ていきましょう。
Text and Vocabulary
「Reading Greek」シリーズのいわば中心となるテキストです。内容は古典ギリシャ語の読本、リーダーですね。
左側ページに古典ギリシャ語の文章が掲載され、右側のページには、その文章で使われている単語の意味(英語)が載せられています。
つまり、単語のリストを見ながら古典ギリシャ語の文章を読み解けるという構成になっています。
文法も何も知らないまま文章が読めるのか、と感じるでしょうが、それほど心配しなくても大丈夫です。セクションが進めば読み解くのも難しくなっていきますが、最初のうちは驚くほどスラスラと読むことができます。非常にうまく作っているな、という印象です。
しかも、文章の内容はストーリー仕立ての対話編が主であり、楽しく読み進めることができるのではないでしょうか。
ちなみに、本書に登場する単語はすべて巻末に英訳とともに採録されています。つまり辞書は必須ではありません。これ一冊あれば古典ギリシャ語の読解力を鍛えることができるのです。
問題は、古典ギリシャ語の文章の翻訳が掲載されていないことです。そして、すべての文章の翻訳は、「An Independent Study Guide」に掲載されています。
An Independent Study Guide
「Text and Vocabulary」は優れたテキストですが、いかんせん古典ギリシャ語の文章の翻訳が掲載されていません。
そこで必要になるのが本書です。
本書があれば、翻訳を参照しながら、古典ギリシャ語の本文の意味を追うことができます。
翻訳だけではなく、各セクションで注目すべき用法なども丁寧に書いてあります。
想像するに、おそらくこの「An Independent Study Guide」は教師用の教材なのではないでしょうか。注目すべきポイントというのは、教えるべきポイントなのかもしれません。
欧米でどのように使用されているか詳細はわかりませんが、独学者にとって非常に有益な本であることは間違いありません。
Grammar and Exercises
上記の2冊があれば、とりあえず古典ギリシャ語に慣れ親しむことができますが、文法に不安がある方はこちらも手元にあれば心強いでしょう。文法についての説明書です。
しかも、「Text and Vocabulary」のセクションとリンクしていますから、リーディングでよくわからない箇所などは、この「Grammar and Exercises」で詳しい説明を確認するというスタイルです。
カンタンな練習問題も豊富に掲載されており、その解答はすべて「An Independent Study Guide」に収められています。
正直、「Text and Vocabulary」と「An Independent Study Guide」があればこれは要らないかな、と思わないでもないですが、あればやはり便利なことは間違いありません。
ちなみに私はどういう本なのかまったく知らないまま、一番最初にこの「Grammar and Exercises」を購入しました。
文法書として使っていましたが、練習問題の解答もないし(解答は「An Independent Study Guide」にあります)、なんだか使いにくいな、という印象でした。
そのうち、Reading Greek シリーズのなかでは補助教材のような位置づけだと気づき、上記2冊をあらためて購入した次第なのです。
もちろん、「Grammar and Exercises」は悪い本ではありません。日本語で入手できる古典ギリシャ語の教科書と比べても遜色ありません。むしろ日本のものより良いと思います。
ただ、Reading Greek シリーズを揃えたときに、その真価を発揮する一冊だと言えるでしょう。
おまけ
Reading Greek シリーズに関連した書籍をもう少しご紹介しましょう。
Learn Ancient Greek
これは文法書ですが、勉強するためのものというよりは読書して楽しむためのものです。ストレッチといったところでしょうか。
それでも、練習問題もあり、その解答もちゃんと収められており、日本のどこかの文法書とは同列には論じられません。古典ギリシャ語の全体像をつかむにはもってこいの一冊です。
Pocket Oxford Classical Greek Dictionary
今回ご紹介した Reading Greek シリーズは基本的に辞書ナシでも勉強に困ることはありません。巻末に単語が掲載されているからです。だけど、手軽な辞書が欲しい、という方にはこちら。
辞書、というかほぼ単語帳に近い感じです。
それでも一応、希英だけではなく、英希も少しですが収められています。
古典ギリシャ語の語数は約2万。変化表もないため、実際のテキストを読むには少々心もとない。ただ、Reading Greek シリーズに取り組むにはちょうどいい辞書ではあります。
なにより廉価で入手できる数少ない辞書です。興味がある方は検討してみていかがでしょう。
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