中国語を学ぼうと思う初心者にぜひオススメしたいのが 金丸邦三「中国語四週間」です。
有名な「四週間」シリーズの一冊です。
「四週間」で終わるかどうかは別として、わかりやすさという点ではシリーズ屈指の出来です。
どんな構成になっているのか、さっそくご紹介していきましょう。
四声から読解まで
本書は「四週間」シリーズの一冊ですから、形式的には四週間、つまり28日で完了するように構成されています。1日1項目をクリアーしていくイメージです。
1日目は発音から始まります。中国語には「四声」という4種類の声調があって、この「四声」を理解することから中国語の学習がはじまるのです。
この「中国語四週間」では「ピンイン」という声調付きのアルファベットによる表記方式を採用しています。
かつては「ウェード式」と呼ばれる方式が広く使用されていましたが、現在ではこの「ピンイン」が主流となっています。辞書も「ピンイン」方式で書かれているため、この「ピンイン」に慣れることが非常に大切です。
この「中国語四週間」に詳細な説明がありますので、最初の発音・声調に関する項目はぜひ熟読してください。
もちろん発音はテキストで読むだけでは足りません。
やはり耳で聞き口で発音してみなければ中国語の感覚は絶対につかめません。
YouTube などで実際の発音を検索して聞いてみるのをオススメします。さまざまな人が中国語会話の動画をアップしていますから、片っ端から聞いてみるのもひとつの手です。
そのあと再びテキストに戻ってもう一度確認です。中国語が難しく感じられるのは、発音に原因があります。聞き取れるようになるまではかなりの時間を要するはずです。
繰り返し繰り返し音声に触れる必要があります。
しかし、ただ音声にふれるだけでは効率が悪いのも事実です。
基礎となる知識あってこその音声です。どちらが欠けてもダメなのです。
音声に慣れてきたら次は文法です。文法に関しては学校英語で苦手意識を植え付けられてしまった方も多いのではないでしょうか。その心配は無用です。中国語は英語より日本人に親しみやすい構造をもっています。
まず、時制がありません。
名詞の単数・複数もありません。
ドイツ語やフランス語にある名詞の性もありません。
基本的にS・V・Oの構文ですが、英語のように厳格に守るわけでもありません。
中国語は日本人にとってきわめて親しみやすい言語といえます。先に中国語に習熟してから英語を学んだほうが学習効率もあがるのではないかと思うほどです。
ただ、中国語の漢字は簡体字といって日本の漢字とは趣が違います。とはいえ、やはり漢字には違いないので慣れるのにそれほど苦労はしません。
問題はやはり発音なのです。発音が中国語をマスターするうえで最大の難関であるのは間違いありません。この点は慣れるしかありませんので、量でカバーしていくしかないでしょう。
ちなみに私は文法好きなので発音はなおざりにする傾向があります。そのせいで文章は読めても聞き取りになるとからきし自信がありません。
発音も自己流で、因数分解を解くように中国語の文章を読んでいますが、べつに誰に迷惑をかけるわけでもありませんから、そのまま発音の方はなおざりにしています。
本書の構成
本書の構成を見てみましょう。
1週目は声調の説明から始まり、第3日までは発音の説明です。第4日から人称代名詞を学び、さらに指示代名詞や形容詞述語文、数の数え方、物の数え方(量詞)などを学びます。
2週目からは本格的に文法説明に入っていきます。状況語や限定語、完了態、結果補語や可能補語などが主なトピックです。
3週目は受け身、比較、強調、複文や接続関係などを学びます。
4週目はいままで学んだ知識をもとに長文を読んでいきます。カンタンな笑話から寓言、論説文、小説などがその対象です。なかには老舎のエッセイや魯迅の小説も含まれています。
ちなみに、長文はもちろん本書に記載されている例文にはすべてピンインが読み仮名のようにふられているため、単語の読み方について辞書をいちいち引く必要はありません。この点は大変便利です。
また、四週間シリーズはどれもそうですが、各項目ごとに(つまり1日ごとに)練習問題があります。もちろん解答も巻末にあります。
なぜか練習問題だけあって解答を載せていない文法書が存在しますが、この四週間シリーズはちゃんと練習問題と解答とセットです。ここが凡百の文法書と一線を画すところです。
まあ、いまはどのテキストでも練習問題と解答は基本セットでしょうが、昔は語学の教科書は大学講義での教材という位置づけだったのでしょうか、解答がないものが多かったのです。
独学者を想定していない作りです。四週間シリーズはそうではありません。自信をもって勧める所以です。
収録されている文章
第4週に収録されている長文もなかなか読み応えがあります。
第4週まで待つ必要はありません。どしどし読んでいきましょう。
とくに老舎の「養花」(養は簡体字)と、魯迅の「一件小事」は必読です。
老舎のエッセイは花を育てる喜びを素直につづったもので、作者の人となりが伝わるあたたかいエッセイです。
魯迅の「一件小事」は作品集「吶喊」の一篇で短い小説です。
魯迅とおぼしき主人公と車夫、そして老婆、登場人物はこの3人です。この小説は短いですが、それでも魯迅の人柄がよくあらわれたすばらしい作品だと思います。
私もこの「一件小事」は何度も読み返したなつかしい作品でもあります。
これら中国文学の巨匠の文章を読みながら中国語を学べるなんて最高です。最初に中国語を学ぶなら、この「中国語四週間」をオススメします。何度も何度も読み返してください。
この文章を書くために本棚にあるぼろぼろの「中国語四週間」を手にとって久しぶりに「一件小事」を読んでみました。やはりすばらしい。皆さんにもぜひ読んでもらいたい一篇だという思いを強くしました。
自信をもってオススメします。
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